ある患者さまとのエピソード

院長の梅野です。

今回は、先日お亡くなりになった方のお話です。

 

この方との出会いは2年半前でした。

 

病名は脊髄小脳変性症でした。原疾患は進行性の病気で有効な治療法はなく、度々発熱や意識消失を認め、その都度救急車で病院搬送。しかし病院での検査結果は入院するほどではないということで、いつも点滴施行後に帰宅することを繰り返していたとのことでした。その際、奥さまは移動もままならないご主人を抱えて自車やタクシーで病院へ連れて行き、自宅へ連れ帰っていたそうです。

 

当時、介護体制に恵まれず、各種介護サービスや移動の手配は全て奥さまがせざるを得なかったのと、関わった方からは心無い言葉を浴びせらせることも度々あったそうです。

 

そこで訪問診療の相談があり当クリニックの介入がはじまりました。

 

まずは介護体制を一新し、訪問看護を導入しました。

発熱などの有症状時にはまず在宅で点滴などの加療をし、改善が乏しい場合には入院前提での搬送先の手配を行なう体制にしました。

 

経過で胃瘻造設、吸引器、在宅酸素と各種医療機材の導入を要しましたが、主たる介護者である奥さまから献身的な介護を受け、奥さまご自身も介護の合い間に趣味のケーキ作りを楽しみながら自宅療養を2人で行なってきました。

 

残念ながら最期は入院先でお亡くなりになりましたが、その後、奥さまとお約束していたインフルエンザの予防接種とグリーフケアも兼ねて、お宅にお邪魔しました。

お話を伺うと、大変穏やかで満足された表情をされていました。そしてお看取りの際に涙は無かったと。笑顔でお見送りできたとのことです。

 

まさに寄り添って、悩んで、苦悩し、同じ時間を常に伴走されていたからこそ、呼吸が止まるという事象を迎えても、「お疲れさま」と(多少はあるでしょうが)後悔なく送り出せたのではないかと思います。

 

お孫さんにはおじいちゃん(亡くなったご主人)が見えているらしく、今はそのお孫さんの報告を聞いて、ご主人が近くに居てくれているんだと安心されていらっしゃるそうです。

 

死に方は生き方だと思います。生きている間に常に死と向き合っていたからこそ、考えを張り巡らせ、11日を大事にされていたかと思います。

 

後悔の無い死別・お別れはないと思います。ただ、それを少しでも小さくするためにも、死についての関わり、心構え、準備に対してのハードルを下げて向き合うことが必要ではないでしょうか。

 

四街道まごころクリニック

院長 梅野 福太郎

コメント: 2
  • #2

    梅野福太郎 (木曜日, 15 12月 2016 12:12)

    杉浦様。
    コメントありがとうございます。特に施設連携は特殊な部分もありますしお互いに頑張っていきましょう!

  • #1

    杉浦 さな江 (火曜日, 13 12月 2016 19:15)

    私も「心構え」をもって仕事だけではなく、何事にも取り組んでいきたいと、思いました。