こんにちは、院長の梅野です。
四街道まごころクリニックは、訪問診療を中心に開業して早くも丸5年を迎えます。
5年やっていますと、新規依頼を受け付け、ご家族に説明し、初回訪問を迎え、実際に定期の訪問診療を開始していくことも、まだまだ改良点はあるとは思いますが、一定の形式に則って円滑に対応できてきていると思います。
しかし、これが逆に悪い意味で“こなれてきている”とも言えるかもしれません。
ここであるエピソードを1つご紹介します。
ある方の訪問診療をご依頼いただきました。
我々は普段どおりに手順を踏んで、初回訪問を行ないました。
比較的状態も安定していましたが、ご本人の日常生活動作や認知機能も徐々に低下しているようで、大きな問題にはなっていないものの主たる介護者である奥様への負担が少しずつ増えてきているようでした。また、心不全もあり、急性増悪時には早めに発見・対処することが必要と判断しました。
奥様との話のやりとりの中で、理解力があり介護力もあると判断し、見直しも含め、下記のような提案をしました。
・日々の血圧、体重チェック(可能な範囲でOK)
・足の白癬に対して市販薬を塗布していたのを、今後は当院より処方する。
・デイサービスの回数を増やす(ケアマネージャーからの提案。当院も妥当と判断。)
・訪問薬剤の導入(内服薬のお届け。訪問可能な薬局への変更)
時間をかけて丁寧に説明し、奥様にもその場で同意いただきました。見直しによって、ご本人の状態を上向きにし、かつ奥様の介護負担も軽減することが期待できると考えました。
しかし、その後連絡があり、今後は定期的な診療は希望しないとのことでした。
理由として、
・自分のやることが増える
・水虫(白癬)の薬を出された
・デイサービスの回数が増えると本人の負担が増える
・通い慣れた薬局が変わる
など、前述の提案がいずれもマイナスイメージで捉えられていました。
知識と経験が蓄積すれば、効果的かつ効率の良いご提案をしてしまいがちです。
しかし、あくまで人と人のやりとりです。
慢性疾患で変化が緩やかな場合には、訪問診療を導入することで日常生活・環境が「急に変化する=脅かされる」と感じ、当事者にとっての不安に繋がったのかもしれません。
適切なアセスメント、効果的なプランを立てつつ、それをどのようなスピードで実行していくか。慎重に見極める必要を感じました。
また同時にコミュニケーションの大切さを思い直すいい機会だったと捉え、今後も初心を忘れず、一歩ずつ前進していきたいと思います。
四街道まごころクリニック
院長 梅野 福太郎