まごころブログをご覧いただいている皆さま、こんにちは!
今月のスタッフブログは訪問リハビリテーション部門より細谷がお送りいたします。
今回のブログでは、ご自宅でのリハビリと聞いてよく「家でどんなことをするの?」といった質問をいただくことがありますので、訪問リハビリテーションとはどのようなサービスなのか、簡単にご説明できればと思います。拙い文章ですが、ご覧いただければ幸いです。
「訪問リハビリテーションは、疾病や加齢等によりICFでいう "健康状態" を害した人だけでなく、"健康状態" を損なう恐れのある者及びその家族や生活を共にする地域住民の全てを対象と捉え、その対象者が生活を営む圏域(地域)に出向き、リハビリテーションの立場から行われる支援の全ての総称を指すものである。また、ここでいう「自分らしく暮らす」とは、本人が納得した生活であり、「納得した生活」とは "その人" の主観だけでなく、"その人" と共に暮らす人達との関係性から生まれる "役割" や "存在価値" を見出した暮らしを指している。そのような訪問リハビリテーションを主業とする理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(訪問療法士)の役割は、ICFでいう "健康状態" を把握した上で、「生活機能」および「背景因子」を評価し、リハビリテーションの概念に基づいた、「本人」「家族」等への直接的支援と“その人”に関わる関連職種へ、「その人らしく暮らす」ための "工夫" や "手段" に対する助言等の間接的な支援を行うことである」(日本訪問リハビリテーション協会http://www.houmonreha.org/association/より引用)
上記の訪問リハビリテーションの定義によると、具体的にどのようなことをするかといったことには、すぐに答えることが難しいと感じます。といいますのも、まず "その人" の事を私たちが知らなければならないからです。同じ脳血管疾患でも出血・梗塞の場所によって症状は異なりますし、住む場所によっても "その人" らしさというものは変わるものだと思います。また、ご自宅内の環境によっても左右されます。ですので、一番重要なことはご本人・ご家族・ケアマネージャーさん・療法士など、"その人" を支える人たちとの連携だと私たちは考えています。これは医療法人社団まごころの理念の一つである『本人・家族だけでなく、関わる誰にとっても負担の偏らない医療・介護・福祉サービスを、私たちはご提案します』に通ずると思います。そこから "その人" の事を知った上で、例えば、「家でどんなことをするの?」について答えていければと思います。以下にいくつか例を挙げてみました。すべての人には当てはまらないかもしれませんが、こんな成功例があったくらいにとらえていただければと思います。
〇復職したい!
「住職としての役割として合掌をしたい」
⇒機能的にできなかったため、代替案の提案。合掌したいという直接的な希望は叶えられなかったが、段差昇降や正座など法要をする場面で必要なことを訓練し、住職として復職できた。また、“その人”が家族の中において存在的価値を見出すことができた。
〇散歩に行きたい!
「訓練として屋外歩行をしたい」
⇒外に出るならまず化粧をしなければですね!屋外歩行に行くときには必ず化粧をすることにした。結果としてより外出に前向きになり、ただ外に出ることよりも洋服を見に行くなどの目的を持った外出につながった。
〇息子さんの結婚式をきっかけに!
「今よりも良くなりたい」
⇒漠然とした本人の希望があったが、麻痺も重度でありなかなか進まなかった。そんな状態の中、息子さんの結婚式が決まり、参加することになった。結婚式ではスカートを履きたいという希望が出てきたため、素足にスカートは…ということで、ストッキングを履く練習からスタートし、スカートへと移行していった。また、装具用の靴はかわいくないということで、普通の靴の作成も実施した。式場は段差やフカフカのカーペットの環境であったため、それを想定しての歩行訓練なども並行して実施し、息子さんの結婚式に参加するという目標を達成できた。
というように、身体機能面ばかりに着目せず、その人の生活の中で、「できないことに目を向けるのではなく、できることに目を向けて」新たな目標設定を行っていくことが "その人らしく暮らす" といった目標のために必要なことではないかと考えております。現在、まごころのリハビリテーション部門には作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、理学療法士(PT)の3職種が在籍しています。どの職種もご利用者さまがご自宅で、より暮らしやすくなるお手伝いをし、最終的には「その人らしく暮らす」を目指して、日々取り組んでおります。
最後に地域の違いについて私の短い経験を踏まえて書きたいと思います。訪問リハビリテーションの定義にもある「圏域(地域)に出向く」といった部分ですが、私自身、理学療法士の免許を取得してから6年間北海道で働いていたため、千葉に帰ってきて地域性の違いを感じました。
例えば、まごころの訪問車両の移動距離は1日20㎞から多くても30㎞未満だと思います。しかし、北海道では1日平均90㎞、多い時には140㎞を走行することもあり、運転中は歩行者に気をつけることよりも野生動物(鹿・キタキツネ・熊など)に気をつけて走ることが多く、鹿と衝突して車が廃車になってしまう人も職員の中で1年に1人はいました。また、住んでいた町の人口は四街道市の約1/10で、面積は20倍(東京23区より広い!) でしたので同じ町の中にも関わらず右往左往しながら訪問するといったことがありました。地域的にも港と山が近く、四街道市のように都会に通勤する方より、第一次産業(農業・林業・漁業)に従事されている方が多くいらっしゃいました。また、第一次産業に従事されていた高齢者の方は「体の動くうちは、働くもの」といった考えが強く、要介護認定を受けると最初から要介護3以上で認定されることが多い地域でした。このように地域によって資源や環境の違いは多くあります。隣の芝生は青く見えるではないですが、北海道にいた頃は、もっと地域資源があれば…と考えることもありました。しかし、千葉に来てからは、選択肢がある分、その利用者さまに合ったサービスをケアマネージャーさんなどの "その人" を共に支えている職種と話し合って決めていくことの難しさを日々感じています。これからも "その人らしく暮らす" を念頭に励んでいきたいと思います!
少し長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。酷暑であった8月も終わり、徐々に涼しくなることに嬉しさを感じております。皆さまもお身体にはくれぐれも気をつけてお過ごしいただければと思います。
四街道まごころクリニック
まごころ訪問看護ステーション
理学療法士 細谷 祐希
北海道での訪問リハビリ中の移動風景(車窓から)です。