頼り、頼られること 〜迷惑をかけたくないという心〜


こんにちは、院長の梅野です。

在宅診療をしていますと、癌の終末期や認知症介護のある場面を垣間見ます。

それは、患者さまが日常の中でできなくなることが徐々に増えるにつれ、家族や他人に迷惑をかけたくない、頼れないと自責の念を感じ、悩まれている場面です。

 

迷惑をかけたくない、頼れないという考え。

 

果たして、どのように捉え、どのように声掛けすればいいのでしょうか。

 

私は九州の田舎町に住んでいたので、近所のおじちゃん、おばちゃんからよくお菓子をもらってましたし、小さい子の面倒を見てくれたりもしていました。昔はそのように、三世代世帯やご近所付き合いでサポートし合う文化があったように思います。

 

現在は、近所付き合いも希薄化していますし、世帯構成の変化があります。

1970年代は夫婦と子供世帯という、"4人家族" が全体の42.5%を占めていたものの、2020年には26.1%に減少。さらに単独世帯が35.7%と最も多くなり、今後さらに増加すると予想されています。単独世帯においては、とりわけ高齢女性の割合が多くなっているようです。

 

我々日本人は、「他人に迷惑かけてはいけない」「人様に頼ってはいけない」「自立しなさい」と教育されてきた歴史的背景があります。

 

日本で「死への準備教育」など「死生学」の普及を図ったパイオニアである上智大学名誉教授のアルフォンス・デーケンさんは、著書の中で、他人に迷惑をかけないとするのは「これは日本人独特の奥ゆかしい態度」と言いつつ、「ドイツではむしろ他者への愛や思いやりを行動で表すことが求められるので、特に困っている人を見つけたら、積極的に手を貸すし、誰かに助けを求めることにほとんど抵抗はありません。」と述べています。

ドイツのみならず、諸外国でも同様な考え方が多いようです。

 

ドイツのことわざに、「共に喜ぶのは2倍の喜び、共に苦しむのは半分の苦しみ」とあると。

自分独りで背負うよりも、ずいぶん楽になりそうですね。

 

あれこれ検索していると、須磨寺の副住職、小池 陽人さんのYouTubeに辿りつきました。

 

  • ある研究では、どんな弱点があっても競合に恵まれなくても生き生きと充実人生を送るためには、自分はありのままで愛される価値があると信じていると言うことが共通点。
  • 釈迦の教え「天上天下唯我独尊」とは、自分を大切に扱うという発想。
  • 最大の自傷行為は、助けを求めないこと。
  • 児童虐待は、児童相談所のマンパワー不足から両親が他の人に頼れない、また閉鎖空間で生活していたから。それは人に頼れない現代の課題かもしれない。

など言及がありました。

 

さらに、精神科医の松本 俊彦先生の発言を取り上げて、「自立とは依存先を増やすこと」ということでした。

 

「歯を食いしばって、誰にも泣き言を言わずに1人で頑張ることが自立ではない。できるだけサポーターをたくさん作ることこそが本当の自立なんです。そして最大の自傷行為は何かと言うと助けを求めないことなんです。」と引用されていました。

 

自分なりにさらに腑に落ちるように解釈すると、

「自立とは依存先を増やしつつ、依存していることを自覚し感謝すること。」

 

子供の時は、周囲や大人に頼って生きている。それが大人になるにつれてだんだんできることが増えていき、一見頼ることや依存が減っているように思える。

しかし、生活や仕事、関係性の幅が増えた分、依存先=頼っている総量はむしろ増えているんだろう、ということだと思います。

 

少しは気楽に「周囲に頼れそうだな」と肩の荷を降ろして日々が過ごせるといいですね。

  

医療法人社団まごころ
四街道まごころクリニック

理事長/院長 梅野 福太郎

 


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