緩和ケアは“がんの医療”だけじゃない―非がん疾患を支える地域の力


 三寒四温と言いますが、春の陽気と冬の名残が交互にやってくるこの頃。体調を崩しやすい時期ですが、みなさまお変わりありませんでしょうか?

 2026年2月14日(土)、第14回千葉県緩和医療学会学術大会を無事に開催することができました。

 一般演題やシンポジウムなど非常に充実した内容をお届けすることができましたが、その中で今回、神谷浩平先生(一般社団法人MY wells地域ケア工房代表)による特別講演『非がん患者を地域で支える』について触れたいと思います。

 

1.緩和ケアのパラダイムシフトと非がん疾患への拡大 

 緩和ケアが「がんの終末期」だけのものから、疾患や時期を問わず、すべての人の基本的権利(Universal Health Coverage)へと変化している現状が語られました。特に2026年度の診療報酬改定では、末期がん患者に加え、腎不全患者も緩和ケア診療加算及び緩和ケア病棟入院料も算定対象へ、つまり緩和ケア病棟に入院が可能となりました。心不全、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、認知症などを含めた「非がん疾患」への対応が急務となっています。

 

2.非がん患者の苦痛とケアの特異性

 非がん患者は、がん患者と同様、あるいはそれ以上に倦怠感、呼吸困難、疼痛などの苦痛症状を抱えています。しかし、例えば慢性呼吸器疾患の呼吸困難に対しては、がん終末期ほどオピオイド(モルヒネなど医療用麻薬)のエビデンスが確立されておらず、また身体的苦痛と精神的苦痛(うつ・不安など)が複雑に関連していることが指摘されました。 そのため、薬物療法のみならず、職種連携による疾病管理プログラムや遠隔モニタリングなどを活用し、生活全体を支えるアプローチがQOL改善や予後向上に有効であると説明されました。看護師による電話フォローアップが心不全患者の予後を改善した研究も紹介されました。

 

3.「緩和的アプローチ・基本的緩和ケア」と専門家の役割 

 緩和ケアは一部の専門家だけが行うものではない。専門性や職種を問わず、自分の目の前の患者さんや家族の苦痛に対して対応すること。または苦痛を軽減し生活の質を向上させる役割を自分ごととして捉え、何とかしようと感じ、行動する緩和ケアアプローチがあると。そして、それは症状緩和、チーム医療、コミュニケーション、倫理的な側面のそれぞれのニーズに対応する基本的緩和ケアや専門的緩和ケアを担う医療者等と相談したり、 それら専門家に入ってもらいながら協働が重要と述べられました。

 

4.「意思決定」を超えた関わりとスタッフ支援 

 最後に、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)について触れ、過酷な状況にある患者に「どうしたいか(意思決定)」を迫るのではなく、まずはその人の苦痛や「ありよう」を認め、「聴く・待つ・共にある」姿勢が重要であるとお話されました。「聴く」という字は「ゆるす」とも読み、心をひらいて相手の感情や背景まで真摯に受け止めることだそうです。 

 

 最後に「これからの緩和ケア」は社会の意識改革が必要だと。地域の緩和ケアのゴールは患者・家族の安寧だけでなく、ケアを提供するスタッフ自身の笑顔や成長にもあるとし、医療が人生を支える自然な営みとして地域に浸透すること(=井戸を掘る(資源を作る))であると述べられ、講演は締めくくられました。

 

 一般演題で登壇していただいた「いしいさん家」の石井英寿さんは、

「近所の人や医療的知識がない人でも、その人の人生観に伴走する姿勢こそが「緩和ケア」の概念に含まれることを改めて教えてくれた。つまりは緩和ケアは専門職の技術ではなく、人と人との”関係”の中に元々あったものだということだ。」と後日感想を述べています。

 皆さんの緩和ケアの理解を深める、良い機会になったと実感しています。

 

 神谷先生の特別講演は、OneStreamにて配信中です。特別講演以外にもオンデマンド限定コンテンツを含めた一般演題や教育講演など視聴可能ですのでご覧いただければ幸いです。

 オンデマンド配信視聴希望の方は今からでもエントリー可能です(参加費2000円)ので、お申し込みいただければ幸いです(配信は3/31までの予定)

 

■お申し込みフォームはコチラまで■

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医療法人社団まごころ 四街道まごころクリニック

理事長/院長 梅野 福太郎

*神谷先生の著書『ねころんで読める緩和ケア〜「聴く・待つ・共にある」医療従事者  に向けた実践書〜』(2024年10月 メディカ出版)
*神谷先生の著書『ねころんで読める緩和ケア〜「聴く・待つ・共にある」医療従事者 に向けた実践書〜』(2024年10月 メディカ出版)

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